ランティエリ・デ・パラティコが2026年に初挑戦した夜間収穫から見る、瓶内二次発酵ワインの品質づくり


2026年、ランティエリ・デ・パラティコが初めて試みた夜間の手摘み収穫

夜、畑に灯る光

満天の星の下、トラクターのヘッドライトだけが畑を照らし出す。ロンバルディア州カプリオーロ、ランティエリ・デ・パラティコの畑では、2026年の収穫期にこんな光景が広がりました。夜露で湿った葡萄の葉が、光を受けて鮮やかな緑色に浮かび上がる中、厚手の上着を羽織った作業員たちが房を一つずつ確かめながら、丁寧に鋏を入れていきます。荷台のコンテナには摘みたての黒葡萄が次々と積み上げられ、あたりには静けさと集中した空気が漂っています。

今回、TAPSはランティエリ・デ・パラティコから、2026年ヴィンテージについてのレポートと、この「夜間収穫(ヴェンデンミア・ノットゥルナ)」の様子を教えていただきました。実は、ランティエリにとって夜間収穫は今年が初めての試み。長年の経験を持つ生産者が、なぜこのタイミングで新しい方法に踏み出したのか。その背景には、2026年という年ならではの気候条件がありました。


2026年という年と、新しい挑戦

2026年は、シーズンの始まりから暖かいヴィンテージでした。2月にはすでに春を思わせるような気温となり、生育が例年より早く進行。その後も夏にかけて気温の高い日が続きました。それでもランティエリの畑では、昼夜の寒暖差がしっかりと保たれていたといいます。この寒暖差こそが、フランチャコルタの葡萄を特徴づける自然な酸、そしてワインのフレッシュさとバランスを支える鍵になったそうです。

こうした気候の推移を見極めながら最終のサンプリングを重ねた結果、収穫の開始日として選ばれたのが8月5日。ランティエリにとって、これまでで最も早いヴェンデンミアの始まりでした。例年より早く、暑さの残る時期に収穫を迎えるというこの状況を前に、ランティエリが選んだのが、夜の涼しい時間帯に収穫を行うという新しい方法だったのです。月中旬以降にじっくりと成熟することで、しっかりとしたタンニンと酸を備えた長期熟成型の赤ワインになります。


なぜ夜に摘むのか?涼しさが守る、ブドウ本来の味わい

日中の畑は、気温の高い時期であれば30度を超えることも珍しくありません。気温が高いままの葡萄を収穫すると、房の内部でごくわずかな発酵や酸化がすぐに始まってしまい、せっかく育んできた香りや酸が損なわれてしまいます。特にスパークリングワインの原料となる葡萄は、フレッシュな酸味と繊細な香りをどれだけ保ったまま醸造所に届けられるかが、その後の仕上がりを大きく左右します。

夜の涼しい時間帯に収穫することで、葡萄は畑から醸造所に届くまで、より低い温度を保ったまま運ばれます。ランティエリ自身も、この方法によって葡萄を畑から醸造所まで最良の状態で保つこができ、より低い温度で圧搾に入れたことで、果汁の新鮮さと純度を最大限に守ることができたと振り返っています。


フランチャコルタの規定と、収穫がもたらす個性


フランチャコルタは、シャンパーニュと同じ瓶内二次発酵法(メトド・クラシコ)で造られる、イタリア屈指の高級スプマンテです。1995年には、イタリアのスパークリングワインとして初めてDOCG(統制保証原産地呼称)に認定されました。使用できる葡萄品種はシャルドネ、ピノ・ネーロ、ピノ・ビアンコのみと定められ、瓶内熟成も最低18ヵ月以上と、シャンパーニュの規定よりも長い期間が義務付けられています。

畑はイゼオ湖の南に広がる丘陵地に位置し、小石や砂、粘土が混じった水はけの良い土壌が特徴です。湖からの穏やかな風が気候を安定させ、昼夜の寒暖差がブドウに豊かな酸味と香りを与えます。これだけ手間をかけて熟成させるワインだからこそ、原料となる葡萄をどのような状態で収穫し、届けるかが、そのまま仕上がりの品質に直結します。収穫のタイミングと方法へのこだわりは、決して些細なことではないのです。


夜間収穫がもたらすメリット


気温が高いと葡萄の酸は分解が進みやすく、涼しい夜のうちに摘み取ることで、スパークリングワインに欠かせない爽やかな酸味をそのまま閉じ込めることができます。また、冷えた状態を保った葡萄は、畑から醸造所へ運ばれるまでの間も品質を保ちやすく、雑菌の繁殖や果汁の褐変といったリスクを抑えることができます。ニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランをはじめ、世界中の高品質ワイン産地で夜間収穫が採用されているのも、こうした理由からです。

ランティエリのように長年の経験を持つ生産者が、あえて新しい方法に踏み出す背景には、気候の変化に対する真摯な観察と対応があります。2026年という年が突きつけた早い生育と暑さという課題に対して、これまでのやり方にとどまらず、より良い品質を求めて方法を見直す。そうした姿勢そのものが、ランティエリのワインづくりを物語っています。


ランティエリ・デ・パラティコ、丁寧な手仕事の記録

ランティエリ・デ・パラティコのフランチャコルタは、すべて自社畑で栽培された葡萄を手摘みで収穫しています。西暦930年に遡るルーツを持ち、11世紀にはフランチャコルタのブレシア地区に城を構えていたという、この地でも屈指の名門ワイナリー。今回いただいた写真に写るのは、そんな長い歴史を持つ生産者が、2026年に初めて試みた夜間の手摘み収穫の様子です。

トラクターのヘッドライトが畑の畝を照らし出す中、作業員たちが房を一つひとつ選びながらコンテナへと運んでいきます。房を目で確かめながら摘み取れるため、熟し過ぎた粒や傷んだ粒をその場で取り除くことができ、圧搾に進む果実の質をあらかじめ揃えられるのも手摘みならではの利点です。長年培ってきた手仕事の丁寧さに、新しい収穫のタイミングを組み合わせたことで、2026年ならではの葡萄の個性を余すところなく引き出そうとする姿勢がうかがえます。


TAPSがお届けする、ランティエリのフランチャコルタ3種


なお、今回ご紹介した夜間収穫は、2026年に収穫されたばかりのブドウによるもの。フランチャコルタは規定上、瓶内熟成だけでも最低18ヵ月以上を要するため、この挑戦がボトルとなって私たちの手元に届くのは、まだ少し先のことになります。

一方、TAPSで現在お取り扱いしているランティエリ・デ・パラティコのフランチャコルタは、これまでのヴィンテージによるもの。夜間収穫という新しい試み以前から大切にされてきた、自社畑での丁寧な手摘みや、瓶内二次発酵法によるじっくりとした熟成といったランティエリの造りの姿勢は、今回ご紹介する3種にもしっかりと息づいています。


フランチャコルタ エクストラ ブリュット DOCG(シャルドネ85%、ピノ・ネーロ15%、澱と接触したまま最低24ヵ月瓶内熟成)は、トーストしたパンや酵母、ミネラルを思わせる香ばしい香りと、フレッシュでしっかりとした骨格が魅力。辛口ながら厚みがあり、和食や魚介の前菜との相性も抜群で、フランチャコルタに初めて触れる方にもおすすめの一本です。

フランチャコルタ ナチュール DOCG(シャルドネ80%、ピノ・ネーロ20%、最低30ヵ月瓶内熟成)は、補糖ゼロの完全辛口。柑橘や青リンゴのフレッシュな香りに、白桃やアプリコット、ヘーゼルナッツが重なる複雑なブーケと、長く続く余韻が楽しめる、より本格的な一本です。生魚料理やシーフードパスタと合わせれば、その繊細な旨みが引き立ちます。

フランチャコルタ サテン DOCG は、シャルドネ100%のブラン・ド・ブラン。「サテン」の名の通り、シルクをまとうようになめらかな泡立ちが特徴で、フランチャコルタの中でも特に優雅で女性的なスタイルとして知られています。長期熟成による蜂蜜やヘーゼルナッツの香りも楽しめる、特別な一本です。


まとめ


早い生育、暑い夏、そして初めての夜間収穫。2026年という年が突きつけた課題に向き合いながら、ランティエリは新しい方法で葡萄本来の力を引き出そうとしました。生産者自身も、このヴィンテージが今後どのように育っていくのか、フレッシュさやミネラル感、骨格の表れ方を楽しみにしているといいます。ボトルとして手に取れるのはまだ先の話ですが、今すぐ楽しめる現行ヴィンテージのグラスを傾けながら、いつかその夜の畑の物語をワインそのもので味わえる日を、心待ちにしてみてはいかがでしょうか。

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